交番「24時間体制」を転換
街頭犯罪減で日勤制可能に 人材配置を効率化
警察庁は原則24時間体制だった交番・駐在所の運用を見直す方針を決めた。交番は3交代制、
駐在所は住み込みが中心だったが夜間は無人となる日勤制を認める。犯罪の舞台が街頭からインターネットへと移行するなか、効率的な人材配置が必要と判断した。治安を守る要として長年機能してきた地域警察活動の転換点になる。
警察庁は交番や駐在所について定める「地域警察運営規則」を13日に改正する。各交番・駐在所の具体的な見直し策は都道府県警が検討する。
改正規則は交番・駐在所について、必要がある場合にはいずれも日勤体制の地域警察官により運用できるとした。地域の状況や人出に応じて、ワゴン車による移動式交番や警察官が一時期間駐在する臨時交番を開設できるとする規定も盛り込んだ。
交番は1874年に警察官が交代で立つ「交番所」が東京にできたのが始まりで、1880年代に24時間体制になったとされる。パトロールや落とし物の受理といった業務に加え、事件が起きれば現場に急行し初動捜査も担う。2024年4月時点で全国に交番は6215ヵ所、駐在所は5923ヵ所ある。
地域の密着しながら治安を守る仕組みとして海外でも注目され、シンガポールやブラジルでも「KOBAN」として導入された。
見直しの背景には犯罪情勢の変化がある。23年の刑法犯認知件数は約70万件で、戦後最多だった02年(約285万件)と比べ7割超減った。中でも地域警察官が警戒するひったくりや車上狙いといった街頭犯罪は02年から8割減の24万件に抑え込んだ。
一方、近年は特殊詐欺やSNS型投資詐欺、ロマンス詐欺、サイバー犯罪といったインターネットや電話を通じた犯罪が増えている。各警察では摘発に向けこうした犯罪に対応する部門の陣容を強化している。
その結果、24年4月時点の警察職員数は約29万人で10年間で微増した一方、交番勤務を担う警察官は8万6551人と約3%減った。交番や駐在所の統廃合は進んでいるが、「24時間体制を維持するのが難しい地域も出始めている」(警察幹部)という。
「1人体制」など人員が手薄な交番が襲撃されるリスクも顕在化した。富山県では18年、交番の警察官が刺殺され、奪われた拳銃で民間人が射殺される事件が発生。交番の警察官が襲われる事件はその後も仙台市や大阪府吹田市で続いた。
運用の見直しに向け警察庁は23年6~10月、各地で交番や駐在所の日勤制を試験的に導入。近隣する交番での対応やパトカーによる巡回を強化することで治安への悪影響はないと判断、今回の規則改正に踏み切った。
交番・駐在所の機能縮小に対しては不安の声もある。30年度をめどに1割近くの交番を統廃合する大阪府には「治安が悪く ならないか心配だ」といった意見が寄せられた。治安を維持するためには効率的な地域巡回が一つのカギになる。
京都府警は事件・操作情報を巡るビックデータを活用した犯罪予測システムを16年に導入。犯罪が起きやすい地域や時間を割り出し、重点的に巡回している。事件は発生の可能性が高いとされた駐車場でバイクの窃盗犯を逮捕するという成果を上げた。
神奈川県警はワゴン車を「移動式交番」にした。30台が交番廃止地区の商業施設で活動している。
元福岡県警本部長で京都産業大学の田村正博教授(警察行政法)は「交番は通信や交通手段が乏しかった時代に、警察官が現場に急行したり住民が駆け込んだりできるような仕組み。社会や犯罪の情勢が大きく変わり、常駐を一律に求めるのは時代に合わなくなっている」と話す。
そのうえで「良好な治安を確保するためには警察官による常駐の要否を見極め、限られた人員を配置する判断が重要だ」と指摘した。
〚出展:日本経済新聞 2024年9月13日(金)版〛
町の交番や駐在所を減少させている傾向があるのが実態である。交番・派出所の意味は単に治安や安全の確保だけで無く、遺失物や道案内等の役割等を担っている。
市民にとっては、不安であり安心を損なう状況になり得る。例えば、交番・駐在所をそのまま維持し、町の案内所に転換して各区市町村の行政が管理して運営を行う。
夜間には警備会社の警備員を配置する方法をとり、24時間体制を維持する事を考えるべきである。